ネパール
幸せ分かち合いムーブメント
〜教育の現場から幸せにつながる地域づくりをめざします〜
現状・背景
教師となった元奨学生
ネパールは、1996年に始まった内戦、王家の虐殺事件、大地震など激動の年月を乗り越えて、連邦民主共和国となり、2015年に新憲法が制定されました。村や町など地方自治体の代表が20年ぶりに選挙で選ばれ、新地区制度への移行に伴い、これまでより多くの予算が地方政府に降りるようになりました。これまでNGOが担ってきた支援は、徐々に地方行政に移管することが期待されます。
しかし、行政はまだ「真の開発」を担う準備ができていません。パートナーNGOのSAGUNは、数年前から行政との協働を視野に入れて農村開発に携わってきました。ネパール社会が変革する今、地球の木はSAGUNとともに他の地域のロールモデルとなるような開発をめざします。
幸せ分かち合いムーブメントの支援プログラムの内容
私たちは、2007年よりカブレ郡の村で社会的・経済的に最も弱い立場に置かれた少数民族や女性たち、子どもたちが自分たちの地域の問題は自分たちで解決する力を付けることに力を注いできました。それには、高等教育を受ける若者が増えることが重要となります。カトマンズの東、カブレ郡マンガルタール村の公立高校を拠点に、教育の充実、生活改善・人材育成などのプログラムを進めています。その内容は外部者が決めるのではなく、初めの一歩から村人が主体となり、支援する側とされる側が話し合い、「幸せな時を共有しながら」進めます。「幸せ」を開発の指針としていることが特徴です。真の参加型のあり方を探求し広めるため、マンガルタール村をそのモデルとし、他の地域へも広げていくことを目指しています。
2018年度は、貧困家庭の男子2名も。
- 奨学金
子どもが貧困から脱出するには教育が必要です。ところが、いまだに「女子に教育は要らない」という考えや児童婚の慣習がはびこっています。高校2,3年への進学を希望する生徒から、女子、少数民族・ダリット(不可触民)を優先し、奨学金を支給しています。奨学金は授業料と文具に充てられます。
- 小学校教師サポート
ネパールの小学校は、どこも教師不足に悩んでいます。2019年度も引き続き、マンガルタールの2つの小学校の2名の先生を支援します。卒業した奨学生など、地元の若者が小学校の教師になれるよう、給料をサポートし指導法のアドバイスも行っています。民族の言葉が話せる先生は、子どもたちからも保護者からも喜ばれています。
- ヤギの飼育プログラム
2015年2度の大地震が支援地の村々を襲い、9割の家屋が破損しました。それまでおこなっていた、貧困家庭を対象とした、無利子の小口融資(1年経ったら借りたお金を返し、回収されたお金は他の村人たちに回される回転資金方式)では、被災家族をサポートしきれなくなりました。
そこで、村人たちと話し合い、この地域にはヤギの飼育が適しており、ヤギの飼育で高収入を得られるという結論になりました。2016年から飼育プログラムに参加した女性グループ10人のうち、9人は、2年後に借りたお金を返すことができ、ヤギの数は倍になりました。融資されたお金は回収され、他の村人たちに回されます。現在、このプログラムでヤギの飼育に関わる農家は35軒です。
- ニュースレター(ロシラハール)発行・・700部
「ロシラハール」とは、「ロシ川の波」という意味です。ロシ川流域に「幸せ分かち合いムーブメント」のコンセプトがさざ波のように広がることを願って命名されました。同誌には地域の人々にとって有益な情報(ヤギが病気になった時の対処法など)が満載されており、紙媒体の少ない地域の人々に喜ばれています。高校生や先生、村人などが投稿します。地球の木からも寄稿します。
- 行政のリーダーへのトレーニング
地震で被害の大きかった地域の状況調査をし、首長に報告書を提出したところ、「ぜひ、リーダーを対象としたトレーニングを実施してほしい」との依頼が来ました。憲法が改正され、新たな地域づくりが進んでいますが、村の代表者たちや役人たちはまだまだ力不足。開発のノウハウを知りません。開発の専門家集団であるSAGUNの力を発揮する時がやってきました!
現地パートナー
SAGUN
1991年に設立されたネパールのNGOで、そのメンバーは、さまざまな分野の専門家や社会活動家で構成されています。社会全体との調和を計り、協力関係を構築することによって、貧困・人権侵害・差別・環境破壊などの問題を解決する取り組みが特徴です。
カマル・フヤル(Kamal Phuyal)さん
SAGUNの理事であるカマルさんは、ネパール各地でNGOや国際機関、政府機関の仕事をしている参加型開発ファシリテーターです。「開発とは幸せを分かち合うこと」をモットーとし、持続可能な開発のためには、そこに住む人々の参加が必須で、最終的には彼らが主導権を持つことが必要であると考えます。PRA(主体的参加型農村調査法)などの参加型手法を学び、1990年以来、ネパールの農村で実践してきました。現在ではネパールだけでなく、国際的に最も優れた農村開発ワーカーのひとりとして日本や外国でも活躍中です。
マハンタ・バブ・マハルジャン(Mahanta Babu Maharjan)さん
SAGUNの事務局長兼プログラム・コーディネーター。以前カマルさんと一緒にアクション・エイドで参加型プログラムを実施していたことがあります。CMCネパールという精神障害者への理解を深めるための活動にも関わっていたので、抑圧された気持ちが集団で現れる現象などに詳しく、男女差別や家庭内暴力からくる問題に関心が深い人です。家庭ではお孫さんの優しいおじいちゃん。
ムク・マヤ・タマン(Muku Maya Tamang)さん
村の連絡員
夫と2人の息子の4人家族で村に住んでいます。日本に研修に来たことがあるので、日本語が上手。SAGUNに加わってからバイクの免許を取り、山の中の各区域をバイクで回って連絡を取り合います。中断していた勉強を再開し、高校を卒業。現在は村の大学に通っている、勉強熱心な女性です。スタディツアーの時は通訳としても大活躍。笑顔が素敵!
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